番外編 アメリカ
〜巨大化するハリウッドと自滅する日本〜
さ〜て、今回はアメリカを取り上げたいと思います。
2007年のハリウッド大手6社の興行収入は
94億2000万ドル
と昨年より9%上がったそうです!
ちょっとデータが古いんですが、
主な全米興行収入の映画を見ていきましょ〜
2007年公開の主なハリウッド映画 全米興行収入(2007年9月)
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売上もケタ違いですね〜
やはり続編物が目立ったのが特徴でしょうか
X-MENやスパイダーマンと言った、アメコミの
映画化も目立っています。
かつてはリメイクばっかりで
ハリウッドは深刻な映画コストの急増!
コンテンツ不足などの批判も多くありました。
(うちのサイトも批判しましたが・・・)
しかし、それらの危惧(きぐ)を乗り越えた
背景には海外市場の開拓がありました!
例えば、配給・ワーナー・ブラザーズ
ウィル・スミスさん主演の
『アイ・アム・レジェンド』
は、25ヵ国で550万枚のチケットを販売!
海外の売上は2008年元旦までに
1億2600万ドルを叩き出します!
世界的なスターを採用し、世界の滅亡と言う
海外でも受けやすいテーマを選んだワーナーの戦略が
ぴたりと当たったかたちになります。
『アイ・アム・レジェンド』(07年12月公開)
世界中で公開され大ヒットを記録する。
イギリス作家旋風!
ハリウッドは海外市場を意識した戦略は
映画作りの原作もグローバル展開を進めています。
例えば海外だけでも6億4500万ドルを記録した
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』はもともと
イギリス人の児童作家J・K・ローリングさんが原作ですし
『ナルニア国物語』
(05年公開)
も同じくイギリスのベストセラー児童小説を
原作をしています。
最近公開されました、これまたイギリスの作家で
フィリップ・プルマンさん原作の
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』
(日本では2008年公開)
に至ってはアメリカ国内では
さっぱりだったそうですが
2008年1月2日時点で海外では
2億200万ドルを記録!
アメリカの国内の3倍以上の売り上げたそうな
ハリウッドでは例え、本国でこけても
海外でガッポリ儲けるという、グローバル戦略が浸透し
ますます巨大化の一途をたどっています!
コンテンツ不足なんてなんのその!
よそからお金で買ってくれば良いわけです♪
やっぱり世の中、お金の力は偉大ですねぇ(笑)
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』(07年12月公開)
温暖化により絶滅が心配されるシロクマさん・・・
アメリカの日本アニメブーム
かつて2000年ぐらいには
アメリカ国内の映市場画の低迷、マンネリ化
が起き、深刻なコンテンツ不足が指摘
されることがありました。
そこで、急速に脚光を浴びたのが
日本マンガ・アニメだったりします!
この頃のアメリカでの日本アニメの状況は98年の
ポケモンの大成功を始め
『遊☆戯☆王』のカードも大流行!
おまけに2002年の『千と千尋の神隠し』が
アカデミー賞を受賞するなど
一時期日本アニメの版権を
買い取るブームが起きました!
日本マンガ・アニメがアメリカを席巻!
と、イケイケ♪だったわけですねぇ〜
その後は、日本のマンガ出版社なども巻き込んで
『アメリカ版少年ジャンプ』(02年創刊)進出や
アニメの『ルパン3世』『とっとこハム太郎』の進出が
代々的に報道されるなど
第2のポケモンを目指せ!
と言わんばかりに
怒涛のアメリカ上陸が始まります!
ただその後は第2のポケモンは現れず
2003年頃にはルパン3世の実写化の話も
話題になりましたが、今ではまったく情報はありません!
極めつけは05年の『ハウルの動く城』が
鳴り物入りでアメリカで公開されますが
多くの期待に反してアメリカでは
さっぱりだったという結果になります。
日本アニメはなんでも受けるわけでない
との考えが業界関係者の間では
改めて再認識された訳ですね。
『ハウルと動く城』(日本2004年公開)
アメリカで公開されるが、興行収入はさっぱりだった
日本映画 リメイクブーム
何度かハリウッドのリメイク戦略
について、うちでも取り上げ来ましたが。
アメリカで日本映画に対する一つの転機になったのが
2002年に公開された『The Ring』です。
これは4500万ドルという、アメリカ映画にしては
低予算で作った映画だったのですが
1億2900万ドル
の興行収入を叩き出しビジネス的には
大成功を収めます!
その後は、『THE JUON』や『The Ring 2』が公開されますが
出されるたびに、興行収入は下がり続け
ジャパニーズホラーの売上は下火になっていきます。
しかし、この日本作品のリメイク作品は
アメリカ国内でも安定的な収益を上げ
一つのビジネスモデルとして確立されます。
その後は『Shall We Dance?』もなかなか好成績を収め
この流れはドラゴンボールの実写化や
攻殻機動隊、エヴァンゲリオンの実写化の話に
繋がっていくわけですね〜
実写化が噂される『新世紀エヴァンゲリオン』
こちらは実写化に向けてのイメージイラストらしい
拡大するハリウッド
ライオンキングやアトランティスなど
ディズニーオリジナル映画のパクリ疑惑が
かなり指摘された時期もありました。
もともとディズニーアニメの歴史などを眺めてみると
白雪姫やらピノキオなど、もとを正せば
童話であったり、大ヒット小説だったりします。
最近では『くまのぷーさん』の原作者の遺族が
著作権料を巡ってもーれつな裁判闘争までありました
(2007年にディズニー勝訴で終結・・・)
小説や童話のキャラクターを
独自のアレンジでビックビジネスに変えてしまうのは
ディズニーマジックにほかなりません!
よく日本は海外のものを独自に取り入れるのが
非常に得意だって言われますが
アメリカもある意味、日本より1枚も2枚も
上手であると言えるのです!
またハリウッドは膨大な資金力を背景に
海外市場への進出戦略が功を奏し
ハリウッドはますます拡大の道をたどっています!
最近ではドーリームワークス製作の
『カンフーパンダ』
(2008年公開予定)
は明らかに中国市場をターゲットとしたアニメです。
今後の重点は日本市場から中国市場へ
シフトしていくハリウッドの大きな戦略が見えてきます。
『カンフーパンダ』(08年7月公開予定)
ハリウッドの中国市場攻略への野望がうかがえる
ネット社会へ向けて
次世代DVD規格争いで
ディズニー、20世紀FOXなど支持する
ソニーのブルーレイ・ディスクと
ワーナー・ブラザーズとユニバーサルが支持する
東芝のHD DVDの
両者の規格争いが記憶に新しいですが
2008年1月、東芝の盟友だったワーナー・ブラザーズの
HD DVD 脱退
の発表によりわずか2年足らずでソニーの
ブルーレイ陣営の勝利が決まりました。
かつて10年近くにも及んだ、ビデオデッキの
ソニーのベータマックスと松下のVHSの規格争い
に比べ早期の決着といえますね〜
これはやはりネット社会に対する
ハリウッド映画会社の危機感の現れが
あったのだと思います。
現在のインターネットの高速化にともない
パソコンやiPodなどの端末からダウンロードして
見るのが主流の流れになりつつあり
そうなる前に、ハリウッドではさっさと規格を統一して
次世代DVDで儲けようとの考えがあったんですね。
また、2008年2月11日に
映画やテレビ番組のインターネットや携帯などの
動画配信の著作権料を巡って
米脚本家組合(WGA)と映画テレビ製作者協会(AMPTP)が
ストライキ直前まで対立していましたが
著作権料を0.3%から0.7%に引きあげることに暫定合意
他にもアメリカ政府の著作権保護の強い
働きかけにより中国では海賊版ソフトの比率を
減少させることにも成功しています!
(世界的には海賊版ソフトは増加していますが・・・)
次世代のインターネット社会に向けた
対策の早さは実に見事だと思います!
この時代の変化への対応の速さこそ
アメリカの強さの源ではないでしょうか?
次世代DVD戦争に勝利したソニーのブルーレイ
しかし、今後のDVD市場は消える運命とも言われる
自滅する日本マンガ・アニメ
さてさて話を、われらがじゃぱ〜んに
目を向けたいと思います♪
アメリカの日本アニメDVD市場は2007年には
最盛期の半分近くに低迷し
マンガ市場の成長率も鈍化してしまったそうです。
DVD市場低迷の原因としては
TVなどで数多く日本アニメが放送され始めたことや
インターネットによる違法ダウンロード
が多くなったことが挙げられますが
日本側にも大きな原因があると思われます!
まず真っ先挙げられる点が
日本アニメの著作権使用料の高騰です。
日本マンガ・アニメブームを背景に
使用料がどどどどーん!
っと値上がってしまったため
急速に利益率が悪化した日本アニメDVD市場から
撤退しちゃった業者さんも出る始末です。
かつては格安で提供していた状態から一転!
逆の現象が起こっているとも言えます。
おまけにネット配信や2次利用やらの使用に
あたっての制約がやたら多く
日本側の意思決定が複雑で扱いずらい
商品であることも、日本のマンガ・アニメ離れの
要因も大きな背景にあります。
アジアで席巻した韓流ブームも
日本のドラマ・アニメの使用料の
急速な高騰と制約の多さが
割安な韓国ドラマが台頭した要因になったことを
考えるべきだと思います。
日本は融通が利かず、商売がへたくそです。
よその国の事情などあまり考慮せず
自分の国の基準で物を売ろうとします。
これほど世界が大きく変化しているなか
その対応のまずさから、自分の首を絞めている
点を早く気づくべきだと思います。
アメリカ版『NARUTO 21巻』
07年度 アメリカのマンガの売上NO1を記録
今から振り返れば2002年の
『千と千尋の神隠し』
のアカデミー賞受賞以降
日本マンガ・アニメ、ハリウッドを席巻!
ジャパン イズ クール!
と盛り上がり、あたかも日本のアニメ・マンガが
ハリウッドと対等のごとく述べられてきましたが
残念ながらビジネスの点で見れば
日本のマンガ・アニメはハリウッドの足もとに
及ばないのが現実です。
日本のマンガ・アニメに対する過信とオゴりが
ある様に思えてなりません。
これはかつて80年代に
日本製の家電製品が世界を席巻し
ジャパン アズ ナンバーワン!
との言葉に日本中が酔いしれ
バブリン♪で調子こいた日本企業が
アメリカの映画会社などを競って買いあさった
時代と似ている気がします。
その後「失われた10年」と言われる
低迷の時代へ突入し、格安で映画会社を手放す
顛末(てんまつ)になったのは周知の事実です。
やったことは何か?と振り返れば
日本で上手くいったビジネスモデルをそのまま
海外に持ってきて、失敗したことと
中途半端にハリウッドのマネごとをした
との点があげられるでしょうか?
結果的にはアメリカやハリウッドに良いように
利用されたとも見れなくもありません。
(自滅ではあるんですがねぇ)
マンガ研究の第一人者の夏目房之介さんは
マンガはすき間産業である
とおっしゃていましたが
世界における日本のマンガ・アニメの
全体像をよくとらえていると思います。
最強の巨大戦艦・ハリウッドですが
その巨大さのためにカバーできない
部分があるのも事実なのです。
日本のマンガ・アニメはハリウッドが
カバーできなかった部分を独自に発展させ
90年代の世界的なマンガ・アニメブームへ
繋がったのだと思います。
日本はただハリウッドのマネをするだけでなく
マンガ・アニメの実態を謙虚(けんきょ)にとらえ
ハリウッドがカバーできない部分を
独自に追及し、発展させて行くことが
日本の取るべき道ではないかと思います。
アメリカ版『ベルセルク 14巻』
海外でも根強い人気を誇り、売上もトップクラス
〜おわり〜
2008年5月18日制作
今回は下記のHP・文献を参考に書かせて頂きました。 ありがとうございました! フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 http://ja.wikipedia.org/wiki Variety Japan HOME 2007年のハリウッド映画はアメリカ以外で大活躍 2008/01/16 http://www.varietyjapan.com/news/business/u3eqp30000023fbk.html アニメ!アニメ! 2007年北米マンガ市場220億円 前年比5%増 ICv2調べ 2008月4月22日の記事 http://animeanime.jp/biz/archives/2008/04/20072205icv2.html toc109 全米映画 通算興行成績ランキング http://www.toc109.com/movie/usa/total/index.html ULTIMO SPALPEEN アメリカのコミック専門店での、マンガ売り上げトップ15(2008年3月期) http://willowick.seesaa.net/archives/200804-1.html Tech-On! -- 技術者を応援する情報サイト -- 戦いの軌跡:東芝のHD DVD撤退〜報道特設サイト- Tech-On! http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080225/147895/?P=2 日経BP社の総合情報ポータル nikkei BPnet 〈日経BPネット〉 2007年世界の海賊版ソフトの使用率は38%,損害額は480億ドル http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Research/20080515/301865/ ウーツー(CDレビューア) アカデミー賞開催決定に大きく前進!ネット配信報酬倍増で米脚本家組合、映画テレビ製作者協会と合意 http://ameblo.jp/uhtwogh/entry-10071955536.html CNET Japan 墓穴を掘る日本コンテンツ--北米のアニメ・マンガ事情が語るものコラム - CNET Japan http://japan.cnet.com/column/mori/story/0,2000055916,20362979,00.htm NIKKEI NET ウイークエンド版 世界をかける「MANGA」 若者の支持集め大衆文化の一翼に http://www.nikkei.co.jp/weekend/news/sp20031004.html 「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか 角川oneテーマ21 大塚 英志 ・大澤 信亮 (著) |