第2部 最終回 世界へ飛び出すマンガ・アニメ
『SHONEN JUMP 08年2月号』
日本マンガ・アニメ海外へ
95年から始まった、日本のマンガ業界の低迷
ところが、90年代の空前のアジアの日本ブーム
98年のアメリカでのポケモンの大成功など続き
日本の出版社の間では低迷の続く日本市場から
海外へ進出する動きが本格化します。
そして、2002年にはアメリカ初のマンガ雑誌
『SHOUNEN JUMP』 と 『RAIJIN COMICS』
が創刊されました。
しかし、『RAIJIN COMICS』は部数の低迷で廃刊
『SHOUNEN JUMP』は30万部そこそこと
当初の目標より、下回っています。
また、同じ2002年に角川書店から創刊された
アメリカのアニメ情報誌『Newtype USA』も
2008年2月に廃刊が決定!
また、アメリカの日本アニメDVD市場も
2003年は5億5000万ドルから
2008年は3億5000万ドルに減少するなど
日本マンガ・アニメの苦戦ぶりが目につきます。
『Newtype USA』07年8月号
08年2月で廃刊が決定。新しい雑誌ができるとか
敗北する日本マンガ・アニメ
『多重人格探偵サイコ』の原作者で有名な大塚英志さんと
評論家の大澤信亮さんの共著
『「ジャパンアニメーション」はなぜ敗れるのか』
によると
ジャパンアニメーションはすでに敗北しており
日本のコンテンツはハリウッドの利益の
草刈り場となっている
との意見を述べられています。
例えばアメリカで公開された
『千と千尋の神隠し』
の興行収入は600万ドル(約7億円ほど)
公開劇場数もわずか151館とのことでした。
そして、アメリカでもっとも成功したポケモン映画
『ポケモン/ミュウツーの逆襲』
では、約3000館で公開されたそうで
興行収入8,574万ドル(約90億円ほど)
売り上げたそうですが
その続編では一気に半分にまで下がります。
一方、2002年に公開された20世紀FOXの
3Dアニメ映画『アイス エイジ』は
1億7,600万ドル(約210億円)ほどを記録し
続編の『アイス エイジ2』は前作を上回る
1億9,500万ドル(約230億円)
を記録しています
ポケモンの倍以上・・・
つまり売上的な面では圧倒的にハリウッドに
敗北しているというわけですね。
Pokemon The First Movie(ポケモン/ミュウツーの逆襲)
アメリカにおいての日本アニメの最大のヒット作品だが・・・
リメイクブームのハリウッド
更に最近のハリウッドで日本映画の
リメイク作品が話題を呼んでいます。
注目されたのは日本のホラー映画をリメイクした
『The Ring /ザ リング』(2002年公開)
が大ヒットし話題を呼び注目を浴びましたが
96年に日本で大ヒットした周防正行さん監督の
『Shall we ダンス?』
が2004年
ピーター・チェルソム監督、リチャード・ギアさん主演で
『Shall We Dance?』
としてリメイクされなかなかのヒットを記録しました!
ちなみに日本版『Shall we ダンス?』でヒロイン役で主演され
周防さんの奥さんでもある草刈民代さんは
ハリウッド版『Shall We Dance?』の試写会で
あまりにも旦那の作品が細部まで再現されていた
ことに感動し、涙を流したと後に語っていました。
周防さんも試写会でハリウッド版を見たとき
主人公の役所広司さん演じる中年のサラリーマンが
電車通勤からヒロインの草刈さんに一目惚れする
ところから始まるのですが
ハリウッド版でもリチャード・ギアさんが
電車通勤からヒロインに一目惚れするという
日本版とまったく同じ展開に
アメリカだったら
電車以外の展開があるだろ!(笑)
っと、うれしそうに語っておられました・・・
しかしです!
ここまで、忠実に再現されてさぞかし
周防さんはウハウハだったのだろうと思いきや
なんとノーギャラだそうです!
周防さん自身は自分の作品が
アメリカに認められて大変満足されていることは
間違いありませんが
その反面、日本の製作する側にまったく
儲からない構図ができているわけです。
『Shall We Dance?』 2004年
日米で公開され健闘!でも、原作者にはノーギャラ
ハリウッドのリメイク戦略
『Shall we ダンス?』のみならず
日本のコンテンツはハリウッドから
相場よりも極端に安い値段で買い叩かれている
現実が多くあります。
そして、リメイクによるハリウッドの戦略はもうひとつ
自分たちでリメイクしてしまうことにより
オリジナル作品を追い出してしまう狙いがある
とも言われているのです。
例えばハリウッドがフランス映画のリメイクを
多く撮ることにより、アメリカでのフランス映画の
売上が極端に悪くなってしまう傾向があるのです。
他にも、ディズニーが2001年に製作した
『アトランティス/失われた帝国』
が公開されましたが
その後、その作品に酷似していると言われる
宮崎駿さんの
『天空の城ラピュタ』
がアメリカで公開予定だったのが
急遽取りやめになったことから日本では
様々な憶測を呼びました。
最近のドラゴンボールのハリウッドの映画化決定も
果たして日本として喜ぶべきものなのでしょうか?
日本の優れたコンテンツが
ハリウッドにより刈り取られてるとの見方も
できなくないわけですね。
『天空の城ラピュタ』 86年公開
アメリカで劇場公開直前だったと言われるが、中止に
買い叩かれる日本コンテンツ
ハリウッドは圧倒的な数の映画館を抑え
業界全体が儲かるような仕組みを確立しています。
当然、フランス映画や日本アニメの映画館の
公開数をコントロールできるわけです。
また最近著作権を保護の動きが
活発になっていますが
そもそも、世界一著作権に厳しいアメリカは
『Shall we ダンス?』の例でよくわかる様に
結局は自分達以外の著作権は守りません。
例えばミッキーマウスの著作権が2003年
で期限が切れそうになると、法律の解釈が変えて
2010年まで期限を延ばすなど
『ミッキーマウス保護法』
などと揶揄(やゆ)される始末です。
また、2001年に中国がWTO加盟決定時には
著作権を守ることを明記させ
映画産業の解放の確約まで取り付けました。
アメリカ政府やハリウッドが一体となり自分たちの絶対に
勝てるフィールドに中国を持ってきたわけです。
日本の政府も一緒になって
著作権を守ろう!
と言っていますが
そのことがアメリカの著作権支配のシステムに
取り込まれていることも考えるべきだと思います。
結局、ハリウッドやディズニーのしたたかさ
格安でコンテンツを提供してしまう、日本の
お粗末さが浮き彫りになっているのですね
立ち上がるアニメプロダクション
コンテンツは安く買いたたかれ
ハリウッドにやられたい放題の日本ですが
このハリウッドに対等に立ち向かおうとの動きもあります。
その名も『攻殻機動隊』シリーズでお馴染みの
アニメプロダクション会社 Production I.G です!
ハリウッドでも実写化の話もある『攻殻機動隊』ですが
彼らはその原作版権を利用し
小さなアニメプロダクション会社でありながらも
ハリウッド大手と交渉するなど
独自でハリウッドと渡り合っています!
また、ヨーロッパなどのアニメファンの優秀な人材を
インターシップで会社に招き入れ
いち早く人材を取り込んでしまおうとする
取り組みを積極的に行っているのです。
従来から立場の弱い日本のアニメプロダクションから
脱却を目指す新しい挑戦であると思います!
『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX
』
独自の動きをするProductio .I.G ハリウッドと実写化の交渉中
日本コンテンツの世界戦略
とあるテレビを見た時にスタジオジブリの
取締役社長の鈴木敏夫さんが出ておられました。
その中で、鈴木さんは日本の最近のアニメ業界の現状を
今の日本人の若者がガッツがなくなった
と、日本の若者の根性なし論を展開され
人件費の安い海外に仕事が流失することを
憂いていおられました。
ただ、現在のアニメ界の現状は残念ながら若者の
根性の問題ではないと思います。
そもそも
ジャパンアニメーション = 日本で製作
の発想そのものが時代遅れなのです。
日本のアニメ制作では韓国や東南アジアへの
外注委託は、もはや避けることはできません。
最近、日本政府がアニメクリエーターの
育成を打ち出しましたが
アニメ産業の構造的問題をまったく考えずに
育成されたアニメクリエーターさんのほとんどは
仕事がなく路頭に迷うことになるでしょう。
『「ジャパンアニメーション」はなぜ敗れるのか』
の大塚さん・大澤さんは著書の中で
日本はむしろアジア諸国に著作権をフリーにして
アジアのマンガ・アニメの人材育成をすすめ
10年ぐらい時間をかけ新しい著作権システムを
確立する支援をすることが
ハリウッドに対抗できる一つの方法である
と提言しておられまたが
なるほどなっと感じます。
日本はアジアなどの優秀な
クリエーターが集まるマンガ・アニメ発信基地としての
役割を目指すべきと思います
しかし、この世界の大きな変化に
我らの日本政府はあまりにも鈍感です。
日本政府のマンガ・アニメのコンテンツ支援政策は
間違いなく失敗に終わることでしょう。
世界に広まるマンガ文化
さて、日本のアニメ・マンガビジネスの
課題を述べてきましたが
最後に今後の日本マンガ文化について考えます。
インターネットやPCの急速な発達により
技術や情報のに関しての世界の国境の壁が
なくなりつつあります。
日本の最新アニメが放送後、30分後には
インターネットで世界中で動画が流れ
次の日には字幕付きで流れているのが実態です。
インターネット上に広がる日本はアニメDVDの売上に
深刻な低迷をもたらしている反面
日本のアニメ・マンガファンが確実に増やしています。
海外でアニメイベントを開催すれば多くのアニメファンが
集まることがそれを証明していると思います。
これは統計や数字に表れないものなのです。
そして、その結果何か起こるのか?
そもそも日本のマンガ文化もディズニーやハリウッドの
映画文化の模倣から生まれた文化です。
手塚治虫さんを始めとする多くのマンガ家が
ディズニーのミッキーマウスやアニメーションに憧れ
模倣し、現在のマンガ手法を確立しました。
そして21世紀に入りインターネットを通じて
日本のマンガ・アニメ文化が世界を飛び出し
それぞれの国の文化と融合し
新しい文化を生み出すのではないかと
想像してなりません!
ただ、可能性としてハリウッドや他の新しい文化に
日本文化は呑まれてしまうかもしれません。
ただ、それは仕方ないことなのです。
日本のマンガ・アニメはなぜここまで世界に広がったのか?
それは面白いからであり
変化し続け、新しい面白さを創造できたらです。
変化を止めた時がマンガ・アニメの魅力が
なくなった時だと思います。
面白さの本質に国境はないのですから。
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2008年1月20日 制作
今回は下記のHPを参考に書かせて頂きました。 ありがとうございました! フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 http://ja.wikipedia.org/wiki ULTIMO SPALPEEN 2007年12月13日 パネル「米国のアニメ業界の現状」 (ニューヨーク・アニメ・フェスティバル)パート1 http://willowick.seesaa.net/archives/200712-1.html アニメ!アニメ! Newtype USA 2008年2月号で休刊に http://animeanime.jp/news/archives/2008/01/newtype_usa2008.html 映画のことならeiga.com 「攻殻機動隊」ハリウッド実写映画化に向け交渉開始 http://eiga.com/buzz/show/5903 「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか 角川oneテーマ21 大塚 英志 ・大澤 信亮 (著) 日経ビジネス 2007.12.3 ハリウッド 日本アニメを呑む 脱「技術一流、商売二流」の勧め あぱこさんの質問を参考に色々考えました。 ありがとうございます! |