第4回 台湾 「台湾のマンガ・アニメ事情」
さて、今回は台湾の日本マンガ事情を取り上げたいと思います。
台湾は香港、韓国とならび、最も成熟した日本マンガの市場です。
よく日本のタレントが台湾を訪問して熱烈な歓迎を受けるなど
特に若者が親日的なことでも有名ですね。
日本のマンガ、アニメは1〜2週遅れで翻訳出版され
ほぼ8〜9割は日本製とのことです。
こうした、日本文化に熱中する台湾の若者を
「哈日族(ハーリーズー)」 と呼ばれております。
台湾は戦前、日本の領土であった歴史があり
その当時の台湾のご年配の方は日本語がペラペラでした。
こうした日本の繋がりが、日本のマンガ・アニメ文化の
浸透をより進めたのだと思われます。
海賊版の横行
1945年の日本の敗戦後、中国で起きた共産党との
内戦の争いに負け台湾に逃れた
蒋介石さんが独裁政権を打ち立てます。
その後、蒋介石さんの統治に反対する台湾人のデモを
軍や警察の力による恐怖政治で抑えていました!
これをきっかけに、戒厳令が40年も
引かれるという、ちょー異常事態が続きます。
そんな中、60〜80年代の台湾の日本マンガは
海賊版天国ともいえる状況でありました。
種類もなかなか豊富だったらしく
手塚治虫さんの作品を始め、日本の人気作品が
たくさん出回っていたそうです。
ただ、印刷や製本技術はあまり良くなかった
そうですが、かなり格安で売られていたため
若者を中心に大きく広まることになります。
こうして台湾は海賊版マンガの一大拠点にとなり
中国、香港、東南アジア各国へ輸出されるようになるのです!
つまり90年代にアジアに旋風を巻き起こした
日本マンガブーム
の背景には皮肉なことに台湾の海賊版の
貢献がなくては語れないわけですね〜
蒋介石さん(1887〜1975年)
台湾の独裁者、かなり悪い人だったようです。
80年代の台湾マンガブーム
75年、蒋介石さんの死去
その後、オヤジよりはちょっと良い独裁者の
息子の蒋経国さんがその後を継ぎます。
80年代に入ると日本の海賊版は全盛を極めますが
この頃になると台湾人のマンガ家さん達による
台湾マンガブーム
が巻きおこります!
しかし、その作風は日本のマンガと酷似していると
言う指摘もあったそうです。
その後、87年にようやく戒厳令が解除されますが
翌年の88年に 蒋経国さんは死去。
そして、李登輝さんが後を継ぐとようやく
本格的な民主化が始まります。
これをきっかけに日本マンガ・アニメも
正規のルートで輸入が認めらるようになります。
その結果、台湾マンガは急激に衰退が始まり
一部の台湾人のマンガ家さんを除き台湾マンガは
日本マンガに駆逐されてしまうのです。
90年代の日本ブーム!
94年に日本のテレビ番組などが正式に
全面解禁されると
日本マンガ、アニメ、ドラマの人気が爆発!
海賊版は力を失っていきます。
その後、台湾社会では94年〜2001年にかけて
日本文化の黄金時代が続きます。
特に大人気となった作品は『ドラゴンボール』を筆頭に
その後、『SLAM DUNK』『セーラームーン』などが
相次いで上陸し大ヒットを記録するのです。
この頃になると哈日族(ハーリーズー)とう言葉が生まれます。
これは日本ドラマやアニメに熱中する若者
のことをさし、一種の社会現象になりました。
ちなみに哈日族の言葉の起源は96年の
台湾人マンガ家、哈日杏子(ハニチキョウコ)さんの
『早安日本』の作品の中で生まれた言葉です。
哈日さん自身も日本好きを自認しておりまして
実に30回以上も日本を訪問したとか。
こうして台湾はアジアで日本マンガ・アニメが最も
成熟した市場となったのです♪
台湾版『ドラゴンボール/七龍珠』鳥山明
台湾版の表紙は黒いんですね!
SLAM DANK 騒動
日本でも1億部のセールを誇る大人気の
バスケットスポーツマンガ『SLAM DANK』ですが
台湾でも大ヒットを記録します!
『SLAM DANK』は日本では90〜96年まで連載をしていました。
しかし、2002年の台湾では続編の
『SLAM DANK2』
の連載が始まり人気を博したそうです。
ただこれは、作者の井上雄彦さんには許可を得たものでは無く
一種の同人誌に近いものと思われます。
きっかけは台湾の出版社側が井上さんに
『SLAM DANK2』の執筆を要望したそうですが
井上さんはこれを拒否!
その結果、元・アシスタントなどが加わり
勝手に連載を始めたとの噂です。
『SLAM DUNK2』に興味があったので
台湾のサイトで画像や情報を頑張って探して
見たのですが、さっぱり見つからず・・・
もしかしたらうそぴょんだったのかもしれません!
また、2007年3月には台湾と中国の合作で
製作費は1000万ドル(11億5000万円)をかけ
台湾史上最高額で『SLAM DUNK』の実写映画の
製作が始まったとのニュースが流れました!
しかし、これまた原作者の井上には許可を得ておらず
誤報、もしくは勝手に製作が進んでいるようです。
情報が無い分、なんともコメントができませんが
『SLAM DUNK』が台湾で人気が高いことは
間違いはないと言えるでしょう。
それにしても台湾は怪しい情報が多いですな!
調べるほうの身にもなって欲しいものですね・・・まったく(笑)
台湾版『SLAM DUNK/男儿当入樽』井上雄彦
映画化の噂などアジアでも人気は絶大
謎の多い台湾市場
台湾の日本マンガ・アニメの市場規模について
ジェトロさんの台湾の調査レポート(2007年3月)によると
アニメ関連の市場規模は35億円と
思ったより小さな市場規模となっています。
(ちなみに日本は4000億円ぐらい)
ジェトロさん自身も世界で最も日本文化が浸透している台湾が
思ったより、データが取れなかった点を挙げ
台湾市場の特性や哈日族などの一部の熱狂的な
日本ファンが実態以上に目立っているのでは?
と、台湾市場のユニークな点を強調しておられました。
レポートを読むと台湾の具体的な数字のデータの入手の困難に
ジェトロさんが苦労されていたことが推察できます。
ただ、レポートの中では業界関係者のインタビューなどがあり
日本マンガ・アニメの今後を見るには貴重な資料であります。
現在は、台湾では韓国ドラマの人気が高まっており
日本ドラマの影響力は以前よりは力はないようです。
ただ、劇場版『NANA』や『世界を中心に愛を叫ぶ』
などの日本で人気の高い映画は最近あたっているそうな。
しかし、日本ドラマや映画のが台湾で問題なのは
近年、日本側が厳しい姿勢を打ち出している著作権による
規制が多すぎる点が台湾の放送局側を悩ますタネだそうです。
また、コストに関しても割高なため、おまけに宣伝も
できないようでは、日本ドラマは敬遠しがちになります。
一方、韓国ドラマは宣伝に関する規制や
なによりも台湾の実情に合わせた割安♪であるため
放送局にとってはメリットが高いが点挙げられます。
もう少し、日本は国内の事情のみ考えるのでなく
現地の合わせた商品の売り方を考えるべきでは
ないかと思えてなりませんね〜
『劇場版 NANA』2005年
日本のみならずアジアでも大ヒット
台湾版少年ジャンプ!
さて、最後に台湾のマンガ雑誌を紹介します。
台湾でのマンガの大手出版社は東立出版社
『ドラゴンボール』を始め、ジャンプの人気作品を
中心に販売している会社です。
マンガ雑誌は、毎週『寶島少年』を発行しておりまして
1週間遅れの台湾版少年ジャンプ
と言えるでしょう!
ちなみに2007年10月19日号の連載作品は下記のとおり。
台湾版少年ジャンプ『寶島少年』 07年10月19日 46号の連載作品
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日本の最新のマンガは、ほぼリアルタイムで読まれて
いることがよくわかりますね♪
週刊「寶島少年」46号 07/10/19
台湾版「少年ジャンプ」やはりジャンプ系が強い
こうしてみると日本マンガ・アニメは
ますます国境の壁が無くなって
来ていることが実感しますよね。
台湾では、マンガの分野に関して言えば韓国などの
ライバルには比べ日本は圧倒的な力を持っています。
しかし、日本側が利益を追求するあまり
台湾での日本マンガ・アニメの浸透を妨げている
点も見逃してはいけないと思います。
今後はアニメ、ドラマ、映画などを
台湾の事情に合わせ、利益の上げる仕組みを作っていくか
が重要な要素になるのではないでしょうか!
2006年10月1日 制作
2007年10月21日 加筆・訂正
今回は下記のHPを参考に書かせて頂きました。 ありがとうございました! フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 http://ja.wikipedia.org/wiki 現代台湾文化考 経済学部経済学科 谷野さん http://www.econ.ryukoku.ac.jp/~nomura/tanino.htm ジェトロ 台湾におけるコンテンツ市場の実態 (輸出促進調査シリーズ)2007年3月 アニメ!アニメ! 2007.08.18 「台湾のアニメ映像関連市場は35億円 JETRO調査」 http://animeanime.jp/goods/archives/cat49/ 2007.03.08 ※その後誤報と訂正 「SLAM DUNK 台湾で実写映画化」 http://animeanime.jp/news/archives/2007/03/slam_dunk_0838.html |