番外編 ポーランド
〜ポーランドのマンガ・アニメ事情〜
今回はヨーロッパのマンガ事情
ポーランドを取り上げます!
さて、東欧に位置するポーランドですが
西にはドイツ、東にはロシアと
歴史的にみても強国や異民族に囲まれ
領土の拡大や分割を繰り返し
何かと苦労の多いイメージを感じます。
ちなみに2008年に統計によると
ポーランドのデータは
人口は3800万人(世界34位)
GDPは5257億ドル(世界23位)
と世界でも中堅クラスの
国であることがわかりますね〜
ポーランドのマンガ市場
今回も毎度お馴染2008年に発表された
ジェトロさんの調査レポートと
ネットに公開されていた
中西めぐみさんの2006年の卒論
『ポーランドにおける日本アニメと漫画』
を元にポーランドのマンガ・アニメ事情を
紹介していきたいと思います!
ジェトロさんの調査レポートによると
ポーランドの書籍市場は
2006年のビブリオテカ・アナリジュ社
による調査データでは
3,820万ズロチ
(約17億1,900万円)
となるそうです。
ちなみにマンガの売り上げは
全体の5%に過ぎないとのことなので
それで計算してみますと
8500万円程度と
なんとも小さな市場ですねぇ
ちなみにジェトロさんは
ポーランドのマンガ人口は
約1万人ほどの購読者がいるので
はないかと考えられ
マンガ市場規模は
ポーランドの主要マンガ出版社
3社の売上の合計を参考に
多く見積もって計算しても
400万ズロチ
(約1億8千万円)
ほどではないかと指摘しています。
いずれにしても大手出版社が
単独で進出するには非常に
小さい市場なので
日本人が経営する零細起業が
細々とマンガ出版事業を続けて
いるのが現状の様ですね。
ポーランドの日本アニメ
ポーランドで初期に放送された
最初の日本アニメは
正確な記録はないようですが
70年代には下記の
日本アニメが放送されたそうです。
70〜80年代に放送された主な日本アニメ
|
ほのぼの系の無難な
アニメが多いですね〜
ちなみに70年代のヨーロッパ各国では
『アルプスの少女ハイジ』
がヨーロッパで大成功を収め
各国で高視聴率をマークするなど
ディズニーアニメしかなかった
ヨーロッパにとっては
日本アニメの最初の成功作品と
言えると思います。
これがきっかけとなりヨーロッパでは
日本の子供向けアニメが定着するのです。
ちなみにポーランドでは
『みつばちマーヤのぼうけん』
が何度も再放送が続けられるなど
ポーランド人の間では馴染みの
日本アニメとのことです。
『みつばちマーヤのぼうけん』
ポーランド人は自国のアニメと思っているらしい
90年代の日本アニメ旋風
90年代のヨーロッパでは
第2次日本アニメブーム
が到来します♪
ポーランドでも
89年の共産主義体制の
崩壊とともに
今まで統制されていた資本主義の
娯楽の流入が始まります。
当然、日本アニメも例外ではなく
ポーランドのテレビでも
多数の作品が放送されるのです!
なかでも
『ドラゴンボール』
『美少女戦士セーラームーン』
『ポケットモンスター』
が大ヒットを飛ばし
2002年のポーランドでの
日本アニメの放送時間は
515時間
と、ピークを迎えます。
翌年の03年には380時間まで
減ったそうですが
日本のアニメの定着化をした
ことがわかりますね〜
またスタジオジブリの作品も
ポーランドでは放送されており
96年には『となりのトトロ』『紅の豚』
がテレビで放映され
2000年には
『もののけ姫』
がジブリ作品としては初めて
ポーランドの劇場公開されます。
そして、2002年には
『千と千尋の神隠し』
2006年には
『ハウルの動く城』
が公開されるのです。
『もののけ姫』(日本公開 97年)
アニメブームに乗ってヨーロッパ各地で劇場公開された。
ポーランドのマンガ上陸
90年代の日本アニメの
快進撃が始まりましたが
ポーランドで本格的に
マンガ出版が始まったのは96年でして
日本人の方が立ち上げたJPF社の
『天の涯(はて)まで』
が最初といわれています。
こちらは『ベルサイユの薔薇』でお馴染の
少女マンガ家、池田真代子さんの作品でして
内容はナポレオン時代のフランスに
ポーランドが統治され
その苦悩を描くポーランドの
実際の歴史を元にしたお話なので
ポーランドのマンガの歴史の
始まりにふさわしい題材ですよね♪
JPF社の初めてのマンガは
当初は200部ぐらいしか売れず
ずいぶん苦労をされたようですが
97年に発売した
『美少女戦士セーラームーン』
がヒット作となります。
また99年には『AKIRA』を発行し
ポーランドにおける日本マンガ出版社の
パイオニアとして地位を確立します!
ちなみにポーランドのマンガの
最大のヒット作はJPF社から
2001年に発売されました。
『ドラゴンボール』
でして、大体1巻あたり
20,000部
ほど売れているそうです!
そうなると〜
ドラゴンボールは42巻までありますので
ポーランドでは80万部ぐらい売れたの
ではないかと推察されます!
あら、意外にすくねぇ・・・
ともあれポーランドのマンガの歴史は
少女マンガから始まった訳ですね〜
ポーランド版『天の涯(はて)まで』1巻
ポーランドのマンガの歴史の第一歩を刻む
ポーランドのマンガ出版社
ポーランドの主要マンガ出版社は
JRF社
WANEKO社
エグモンド・ポーランド社
の3社が挙げられます。
ポーランドで初めて
マンガ出版事業を始めたJRF社は
先にも紹介をしましたが
96年に『天の涯(はて)まで』を刊行し
97年には『セーラームーン』
そして2001年に発売した
『ドラゴンボール』
売り上げを大きく伸ばしました。
しかし、ドラゴンボール以降の
ヒット作が続かず2006年の売上は
ピーク時の4/1まで
落ちてしまったそうです。。。
ポーランドのマンガ市場は
横ばいの状態が続いているようです。
一方でエグモンド社は
ドイツでもマンガ出版事業を
行っておりまして
ヨーロッパでは
北欧系の古くから続く
大手出版社なのです!
ポーランドでは90年ぐらいに
『ドナルド・ダック』
を出版し大成功を収めたそうです
マンガ出版は2002年に
『砲神エグザクソン』
の出版をきっかけに
2003年には
『ピーチガール』
『ガンスミスキャッツ』
を発行するなど本格的に
マンガ事業に参入します。
なんだかエグモンド社の
発行するマンガは
やたらマイナーなマンガが
多い様な気がしますが
あまり儲からないので
版権の費用が少ないマンガを
選んでいるのかもしれませんね。
ポーランド版『美少女戦士セーラームーン』1巻
ポーランドのマンガ単行本で初めて成功作品となった
異色のWANEKO社
ポーランドの2番手のマンガ出版社
として、97年に創業をした
WANEKO社があります。
こちらも日本人の綿貫健一郎さん
が社長を務める会社です。
ちなみに会社の名前の由来は
最初に出版したマンガが
スペインでは大赤字だったという
あの伝説のニャンニャンマンガ
『What's Michael』
でございまして
会社の名前もニャンニャンな感じにしよう!
って、ことで『WANEKO(和猫)』とつけたようです。
なかなかいかしたセンスです(笑
WANEKO社から代出版された
代表的な作品としては
『ラブひな』
『GTO』
『金田一少年の事件簿』
などマガジン系の
作品が目立ってますね
発行する作品は日本の
メジャーな人気作品を
多数発行するJRF社とは少し違い
『はだしのゲン』の様な
社会性の強い作品を出版したり
『マンガの書き方』などの
マンガの書き方の解説本なども
出版したりしています。
他にも日本の詩集など
日本文化を紹介する
書籍も多数出版するなど
一般的なマンガ出版社とは
違った活動を行っています。
また2001年には
マンガ雑誌『MangaMix』を
創刊しますが、これについては
後ほど解説したいと思います!
ポーランド版『What's Michael』
記念すべきWANEKO社の最初の出版作品
ポーランドのマンガ雑誌
ポーランドでマンガの発行が始まった
97年にはポーランド初の
マンガ雑誌が創刊されます
その名も月刊少女マンガ雑誌
『Kawaii』です!
Kawaiiのプロトタイプは97年以前から
すでに発行が続いていたそうですが
しかしKawaiiは日本の出版社には
無許可で発行していたそうで
いわゆる海賊版のマンガ雑誌でした。
ちなみにこちらはPhoenix Pressって
ところが発行元でして
ポーランド人の編集長
パヴェウ・ムシャヲフスキさん
のが始めたそうです。
Kawaiiの最盛期には
3万部発行していたそうでして
ジェトロさんのレポートによると
ポーランドの実売数(実際に売れた数字)は
5〜6割程度と言われるそうで
3万部の発行部数のKawaiiは
実際売れたのは
1万8千部ほどではないか
と推察されています。
ポーランドでマンガ普及に一役買った
Kwaiiでしたが、無許可で作品を掲載
していたのが原因だったのか
2003年には日本の出版社と
トラブルが発生し
KAWAIIは廃刊に追い込まれます。
ムシャヲフスキさんは
その後は新たなマンガ雑誌
『Mangazyn』を発行しますが
マンガの発行部数に伸び悩み
結局、1年ほどで廃刊に
なってしまいます。
『Kwaii』2000年27号
無許可で作品が掲載され、その後は廃刊に。。。
WANEKOのマンガ雑誌
一方で、WANEKO社も
2001年よりマンガ雑誌
『MangaMix』
を創刊します!
無許可だったKawaiiとは違い
ちゃんと版権の問題をクリアして
隔月で4作品ほど連載をしていました。
しかし、出版社との関係や
読者の要望などで作品の途中の
打ち切りが相次いだうえ
値段も600円近くもする
雑誌の値段はポーランドの
子供たちには負担が重く
結局、好きな単行本を
買う方が安上がりになるとのことで
部数が思うように伸びず
創刊から3年ほどで
廃刊となってしまいました(涙
課題の多い印税の問題
マンガ出版の事業で妨げている
問題として日本の出版社の
印税の問題があります。
印税とは
海外で日本マンガを出版する際に
支払う料金のことで
大体8%ほどが相場のようです。
ここで問題なってくるのは
出版契約をする際は最低
2000部を発行する必要があり
最終巻までの発行を確約したうえで
前払いでお金を払う必要があります。
例えば日本では40巻を超える
長編マンガも多いので
これを仮に500円で
販売すると仮定をしますと・・・・
2000部 × 500円 × 40巻 × 0.08(8%)
= 320万円!?
印税だけで320万円も前払い
しないといけません。
おまけに印刷費やら人経費やら
他にも諸々の経費もかかります。
おまけにマンガが売れるか
まったく保障がないわけですね
この問題はフランスやドイツでも
ありましたが
これではマンガ市場小さく
JPF社やWANEKO社の様な中小企業では
会社の命運を左右する
ぐらいのリスクを
取らなければなりません。
ちにみにポーランドでは
長編マンガは
敬遠される傾向があるそうで
末尾の巻の売り上げ部数が
落ちていくそうです。
よって、長編の日本の人気マンガは
海外の出版社は出版したからず
比較的、短編なマンガ作品が
好まれて発行される傾向があります。
ちなみに少女マンガの『NANA』も
ポーランドのファンから発行の要望が
高いそうですが、やはり印税の問題で
出版社が発行をためらっており
現在も調べた限りではポーランドで
NANAが発行された形跡がありません。
ポーランド版『DEATH NOTE』6巻
ヨーロッパ・アジアでも支持が高い。
ポーランドの市場を改めて
振り返ってみますと
2002年に日本マンガの
売上のピークを迎えて
その後の売り上げはなんとか
横ばいを維持をしているの
精一杯の状態です。
そして、ポーランドの小さな市場で
マンガ雑誌のビジネスが
かなり難しいとの事実は
注目すべき点ではないかと思います。
ちなみに
『KAWAII』『Mangazyn』を発行した
ポーランド人編集者の
パヴェウ・ムシャヲフスキさんは
マンガ雑誌の廃刊の要因として
「インターネットに負けた」
と、語っていたそうです。
マンガ雑誌の売り上げは
韓国や日本でも落ちていますので
マンガ雑誌ビジネスそのものが
旧・ビジネスモデルとして
成り立つことが難しいのとの結論に
なるのではないでしょうか?
また日本のアニメブーム以降
日本のアニメの版権が高くなり
各国でも放送時間が減少する
傾向になっています。
マンガやアニメをより世界へ浸透
させるには一部版権をフリーにして
中小の出版社や各国の放送局が
メリットが出るような仕組み作りが
必要になるのではないか?
って思っちゃたりするのですが。。。
さて最後になりますが
ポーランドのサイトを調べていたら
『ありがとう』って
雑誌が見つかったで紹介します(w
おそらくマンガ雑誌ではなく
日本のアニメなどを紹介する
アニメ雑誌の様ですね〜
韓国マンガのマンファなども
紹介されているみたいです!
『Magazyn Arigato』 8号
アニメ、マンガ、韓国マンファなどを紹介している
〜おわり〜
2010年7月24日制作
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